Cafe Vita

 このブログは、仙台在住のジャーナリスト、寺島英弥が2009年から職場で暮らしや文化、日々の出来事をテーマに書いており、11年3月の東日本大震災で中断したままになっていました(以後のブログは『余震の中で新聞を作る』をご覧ください)それから6年ぶりに、もはや職場とは関係なく、また書き出そうと思います。

2009/08/12 18:50

小説「沙棗」、お読みでしょうか?

 河北新報朝刊の、後ろの方のページに、くらし面があります。
 くらしにまつわるさまざまなニュース、読み物をほぼ毎日お届けしていますが、そのページの一番下に、小説が載っています。昨年10月から連載しているのが、「沙棗 義経になった男」。お読みになっていらっしゃいますか? 筆者は、平谷さんがメールでくださる原稿の編集者で、いわば第一読者の立場です。そこから、ちょっと魅力を語ってみます。

 沙棗とは、蝦夷の若者です。タイトルの通り、義経ものですが、じつは、義経の影武者になった男の物語。 
 大和人に服従し、近江の国に移配された蝦夷の村の暴れん坊が、事件を起こして村を追われ、差別のない平等な国と聞いた奥州・平泉に行きます。そこで藤原秀衡と出会い、大陸の砂漠に咲く「沙棗」(スナナツメ)という花の名を授けられます。
 やがて、同じように親の愛なく育ち、京を逃れて平泉に来た義経とうり二つであることを知り、「影」となって臣従することを命じられます。立場、愛憎ともに複雑で、最も近い他者の目から見た新鮮な義経像で、源平の合戦でも、これまでのヒーロー中心の大河ドラマ調とは異なり、物語もミステリーのように伏線が入り組んで、正邪なく運命に絡め取られる人間のさまざまな生き死にが描かれます。(いま、壇ノ浦合戦のさなかですので、どうぞ、お読みのがしなく)

 歴史ものの新聞小説は、初めての挑戦とのことです。それゆえ、時代小説の作家とは違う新鮮さ、想像力のふくらみが魅力です。その背景にあるのは、平谷さんの幅の広さでしょうか。

 平谷さんは、岩手県金ケ崎町在住で、昨年4月まで中学校の美術教師をされていました。二足わらじの作家活動は長く、ミステリーやホラー、ファンタジー小説の登竜門である小松左京賞を受賞しています。
大阪芸大を出られて、岩手県芸術祭でイラスト部門の最高賞も取ったことがあります。それで、「沙棗」のイラストも、平谷さんがご自身で描いていらっしゃいます。作家では珍しい存在です。

 二足わらじの生活をされていたとき、寝る時間もなく、大変ではなかったですか?と尋ねたことがあります。なにせ、長編を何冊も出しているのです。 「どちらも、好きなことですから」と笑っておられました。やはり、好きなことだからこそ、苦しいときも乗り切られ、いつか実現できるのだと思いました。「好きな夢は、あきらめちゃいけません」とも。 

 夏といえば怪談。筆者はホラーが好きでして、平谷さんとはけっこう趣味が合います。最新刊は、角川から出た「百物語 第8集」。平谷さんが聞き取りをした実体験集です。(筆者の話もじつはひとつ、採用されております)  「ヴァンパイア 真紅の鏡像」(角川)「呪海 聖天神社怪異縁起」(光文社)なども、お気に入りです。
 
 ご本人はルアーの釣りも大好きで、これなどは、郷里の漁港でのハゼ釣りしか知らぬ筆者には、まだ遠いあこがれの世界。また、最近は、短編を原作に、岩手の仲間たちと「黄色いライスカレー」という映画を制作中。その話題もいずれ、報告させてもらいましょう。
 平谷さんが現在、「ふらっと」でホスト役をされている「沙棗」コミュ、「沙棗の隠れ家」も、のぞいてみてください。「沙棗」コミュのオフ会はもう2回催しておりまして、次回は10月、平泉の予定です。

2009/08/10 15:00

最初のごあいさつ

 “Vita”(ヴィータ)は、イタリア語で“生活”。ちなみにマストロヤンニの映画「甘い生活」は、“La Dolce Vita”でした。なぜイタリア語かというと、たまたま筆者はイタリアンが好みなのと、語呂がいい・・との理由からです。大事な言葉は“生活”。わたしたちの人生、社会、歴史もすべて、日々のささやかな生活に始まります。

 筆者の職場、河北新報の編集局も日々、生活と文化、地域と社会をテーマにしています。それぞれ違うジャンルではないか、という議論もありますが、筆者はそうは思いません。
 生活は文化の母であり、文化は生活を“生き方”に高め、多様な生き方、選択、発信をする人が増えればそれだけ地域のコミュニティは豊かになり、生き生きと動き出し、社会も変わってゆきます。どれがなくても、われわれの日々の営みはなりたちませんし、むろんのこと、新聞のほとんどのページは白紙になってしまうでしょう。
 ニュースとは、くらしの場から発信される声。さまざまに生きる人の思いを読者、地域につなぐのが地方紙の役割だからです。

 “Cafe Vita”は、くらしや文化、地域や社会にまつわる記事や出来事、感じたり考えたりしたこと、出会った人々のことなどを、どうぞ語りにお寄りよ、というくらいの場所です。上品な“Salon”でも、筆者が下戸のため“Pub”や“Bar”でもなく、コーヒーでほっとくつろげる感じの“Cafe”にしました。気軽においでください。  

 投稿者名の「Vita」は、河北新報・編集委員(前生活文化部長)の寺島英弥です。

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